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Franco et O.K. Jazz (1956-89)

ORCESTRE CONTINENTAL
'Josky' Londa Kiambukuta, vocal(1973-)
'Wuta Mayi' Blaise Pasco Mayanda, vocal(1974-79)


Artist

LES GRANDS MAQUISARDS / CONTINENTAL / VOX AFRICA / CONGA SUCCES

Title

LES GRANDS MAQUISARDS / CONTINENTAL / VOX AFRICA / CONGA SUCCES


continental
Japanese Title

国内未発売

Date 1968 - 1972
Label AFRICAN/SONODISC CD 36513(FR)
CD Release 1992
Rating ★★★★
Availability


Review

 O.K.ジャズの人材のおもな供給源は2つあった。
 1つは兄弟都市ブラザヴィルのミュージシャンをスカウトしてくるケース。初期のO.K.ジャズには、エッスー、マラペ、パンディ、エド、ドゥ・ラ・リュヌほかブラザヴィル出身者が多くいたことからそちらとの太いパイプがあった。ボーイバンダ、ユールー、ビチュウらはこの流れに乗って漂着した。
 もう1つは、ライヴァル、アフリカン・ジャズの流れを汲むグループから供給するケース。アフリカン・フィエスタ・ナショナル出身のサム・マングワナがはいった72年以降、この系列からの加入者が一気にふくれ上がった。後期O.K.ジャズのサウンド・カラーはかれらに負うところが大きい。
 
 80年以降、キンシャサ・ウィングを束ねるシマロにたいし、ヨーロッパ・ウィングでフランコの右腕として頭角をあらわすジョスキーもまた、アフリカン・ジャズ・スクールの出身であった。
 周知のように、グラン・カレ(ジョゼフ・カバセル)のアフリカン・ジャズからドクトゥール・ニコ、ロシュロー、ロジェなど主要メンバーが飛び出して、63年に結成されたのがアフリカン・フィエスタ。66年にはこれがさらにニコ率いるアフリカン・フィエスタ・スキサと、ロシュロー率いるアフリカン・フィエスタ・ナショナル(のちのアフリザ・アンテルナショナル)に分裂している。
 のちにO.K.ジャズ入りしたミュージシャンのうち、ロシュローのグループからは前のマングワナをはじめ、ンドンベ、ミシェリーノ、ディジー・マンジェクなど多くの人材を輩出している。ところが、ニコのスキサからはジョスキーぐらいしか思い当たらない。この偏りは、人材の育成にたけていたロシュローと、不得意だったニコの性格のちがいからきている。
 
 「ギターの魔術師」フランコにたいし「ギターの神様」と称されたドクトゥール・ニコは、リズム・ギター担当の兄ドゥショーとのコンビでつくり出したギター・スタイルでルンバ・コンゴレーズに革命をもたらした。しかし、ミュージシャンとしては天才であっても、グループのリーダーとしては資質をまったく欠いていた。かれはメンバーと親しくつきあい意見交換をしながら音楽をつくり上げるタイプではなかった。メンバーは発言がいっさい許されず、かれのいうがまま手足のように動くことのみが強要された。いわば、ジェフ・ベックのような孤高の天才気質のプレイヤーだったのである。
 
 当然、メンバーの入れ替わりも激しく、なかでも人気絶頂の69年には兄ドゥショーを残して全員がグループを脱退してしまうという事態に見舞われている。この緊急事態を打開するために補充されたメンバーのなかにシンガー、ジョスキー・キャンブクタ Josky Kiambukuta がいた。翌年には、リズム・ギターにボポール・マンシャミナ Bopol Mansiamina が加入している。
 
 ニコのスキサは、ザイール本国よりむしろ海外(といってもアフリカ諸国)で人気があったことから、1年のうち数ヶ月は東西アフリカ各国をツアーしてまわっていた。そんな西アフリカ7か国ツアー真っ只中の71年4月、ジョスキーは同期加入のベーシスト、“セルパン”カバンバ William 'Serpent' Kabamba とグループ脱退を宣言。パパ・ノエルのオルケストル・バンブーラ Orchestre Bamboula にいたボポールと“ウタ・マイ”Wuta Mayi こと、ブレース・パスコ・マヤンダ Blaise Pasco Mayanda らをさそってオルケストル・コンティネンタル Orchestre Continental を結成する。
 
 ここにあるのは、「声の壁」とでもいいたくなるようなスウィートだが厚みのあるコーラスが楽曲全体をおおいつくし、その合間にジョスキー本人のソロが控えめに顔を出すというスタイル。これは、まさしくTPOKジャズの代名詞である「ハーモニック・フォース」そのものではないか。
 ジョスキーがTPOKジャズに参加したのは73年、ウタ・マイが74年で、それ以前にもO.K.ジャズにはヴィッキーやユールーらによる絶妙のヴォーカル・ハーモニーはあった。しかし、ジョスキーがもたらしたコーラス・スタイルには、かれらにはない線の太い独特のうねりがある。
 
 ヴォーカル・ハーモニーとともに、コンティネンタルを特徴づけていたのはホーン・セクション重視の音づくりである。このパンチの効いたホーンズの使い方は、69年にキンシャサにやって来たジェイムズ・ブラウンから影響を受けていることはあきらか。ゴリゴリしたサックスもいいが、景気づけの下世話なトランペットもいい味を出している。リズム・セクションもかなりファンキーだ。バックがこんなにソウルフルなのに、歌は洗練されたルンバ・スタイルというところにこのグループのおもしろさがある。
 
 スリーブには68年とあるが、このようなアレンジはJB襲来以前には考えにくいし、第一、結成が71年なのだからそれ以降のレコーディングとするのが正しい。
 
 コンティネンタルの歌と演奏は、知るかぎり、本盤の3曲のほかに、"COMPILATION MUSIQUE CONGOLO-ZAIROISE 1970/1972"(SONODISC CD 36534)で3曲がCD復刻されているのみ。1曲当たりの時間が5分前後だったのにたいし、こちらは6分から7分台。
 にぎやかなブラス・セクションが入っているのは1曲のみで、他の2曲ではホーンズはサックスのみ。曲によっては70年前後のO.K.ジャズ風だったり、ニコのスキサ風だったりする。シルクのようにきめ細やかで、甘くとろけるようなヴォーカル・ハーモニーが申し分なく、ドライでまろやかなギターと奔放で歯切れのよいアルト・サックスの存在感もきわだっている。

 しかし、ギターを中心としたロックっぽいタイトでスピーディなアンサンブルに民俗色をとりこんだ「ザイコ革命」がシーンを席巻するにつれて、ホーン・セクションが入ったコンティネンタルは人気に翳りがみえはじめ、遅くとも74年には解散してしまった。

 "COMPILATION MUSIQUE CONGOLO-ZAIROISE 1970/1972" には、コンティネンタルの3曲のほかに、オルケストル・ロッカ・フェスティヴァル Rock-A-Festival 3曲、オルケストル・シャマシャマ・ア・バンソミ・レイレイ Shama-Shama A Bansomi Lay-Lay 2曲、オルケストル・G・Oマレボ G.O Malebo 2曲と70年前後のマイナーなグループの演奏を収録。
 シャマシャマはあきらかにザイコの流れだが、そのほかのグループはフランコ、ロシュローら、いわゆる第2世代とザイコら第3世代との中間にあった。というよりむしろ、第2世代の延長線上にあった。だから、フランコ、ロシュローら先行世代にとってはサウンド活性剤として組み込みやすかったのだと思う。

 主要メンバーのうち、ジョスキーとウタ・マイはTPOKジャズに行ったが、ギターのボポールはタブ・レイのアフリザへ流れたあと、アビジャンでサム・マングワナのアフリカン・オール・スターズに参加した。ボポールはのちにパリでウタ・マイと再会し、アフリカン・オール・スターズの同僚だったギタリスト、シラン・ムベンザ Syran Mbenza もさそって82年にレ・カトゥル・エトワル Les Quatre Etoiles を結成する。

 カトゥル・エトワルについては、今後レビューする機会もなさそうなのですこしふれておくと、アフリカン・オール・スターズの流れをひくパリ・リンガラ音楽のスタイルをかたちづくったバンドである。メンバーにはほかにベラ・ベラ、リプア・リプア、カマレで活躍したシンガー、ニボマ Nyboma がいた。キーボードもはいってきらびやかではあるが、あきれるほどライトで単調なダンス音楽。コンティネンタルのうねりはどこへ行ってしまったのか。
 フレンチ・カリブ生まれの音楽ズークはリンガラ音楽からつよい影響を受けたといわれているが、かれらの音楽を聴けばこのことがよくうなずける。80年代前半のLPを2オン1したCD"SANGONINI" が、最近、イギリスのスターンズから再発されたようなので、カッサブあたりと聴きくらべてみるのも一興だろう。

 ちなみに、ニボマ、ウタ・マイ、シランは、2001年に元トリオ・マジェシの“ジェスキン”、元O.K.ジャズのギタリスト、パパ・ノエルらと、コンゴ版ブエナ・ビスタというべきケケレ"KEKELE" に参加。2006年現在までに、"RUMBA CONGO"(STERN'S AFRICA STCD 1093)"CONGO LIFE"(同STCD1097)"KINAWANA"(同STCD1101)の3枚をリリース。

 この稿ではコンティネンタルについてのみ述べてきたが、本盤にはほかに、ダリエンスト、ジェリー・ジャルンガナ、ディジー・マンジェク、ロコンベがいたレ・グラン・マキザールが6曲、パパ・ノエル、マングワナ、ダリエンストがいた、アフリカン・ジャズ出身のボンベンガ率いるヴォックス・アフリカが4曲、ジョニー・ボケロ率いるコンガ・シュクセが2曲収録されている。これらのグループの紹介はいずれ別の機会にゆずるとしよう。ちなみに、採点はアルバム全体としての評価である。


(5.7.04)
(4.28.06 加筆)



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by Tatsushi Tsukahara